コンビニは諸問題を抱えつつも、地域のインフラ(ユニバーサルサービス)として機能している。
よほどの離島と僻地を除けば、何かしらはある世の中となった。
うち、「僻地」については、高速道路や国道の開通で徐々に解消されつつある。
例えば四国の中でも険しい山に囲まれた典型的な「陸の孤島」でもある高知県には地場企業が運営していたホットスパーしかなかったが[1]、瀬戸大橋や高知自動車道の開通後、1996年のサンクス進出を皮切りにローソン、サークルKが進出した(松山ほか 2016:49)。
山陰においても、島根県は2006年までポプラが1位だったがローソンにひっくり返され、鳥取県のものを含めた大半店舗が「ローソン+ポプラ」に転換。
「東京から最も遠い10万人都市」とも言われる宮崎県延岡市に至っては、2000年代から3大コンビニが出揃っている。
東京都檜原村のような人口自体が少ない例を除けば、三大コンビニのいずれかは概ね進出しているのではないか[2]。
しかし、離島はコンビニにとって日本最後のフロンティアとも呼べる存在である(多分)。特に、本土から数十~数百kmほど隔絶された島では、進出は容易ではない。筆者別サイト内の「離島コンビニ勢力図」でも言及したが、離島五大コンビニが未進出な島は、人口8000人以上でも島後(隠岐の島、約1万5000人、以下人口データは2010年現在)、沖永良部島(約1万3500人)、屋久島(約1万3400人)、伊豆大島(約8400人)、大崎上島(約8300人)、八丈島(約8200人)、喜界島(約8000人)がランクインする。瀬戸内海の大崎上島を除けば、他の島から隔絶されたところにある。それでもなお、奄美大島(約6万4000人)や佐渡島(約6万3000人)などの大きい島には店舗が展開されている。前述2島には地場系(エブリワン・セーブオン)が進出していたが、2010年代のコンビニ再編で三大コンビニの傘下となり、進出が決まった。福江島(約3万7000人)にはRICマートの店舗が提携したポプラの店舗となった。
その後、2021年には福江島のポプラがローソンに転換。
そうやって、日本最後のフロンティアは消化されていくのである。
2000年の進出図では3島4町ともに未進出だったが、2001年に香深店(礼文島)、利尻店・沓形店(利尻島)が開業。さらに2003年にはダメ押しで鬼脇店(利尻島)が開業。2008年9月14日[4]には奥尻島に進出。現在では4町に5店舗のセイコーマートが存在する。
セーブオンが90年代に進出。1997年の電話帳データに両津店、金井町店、真野町店のデータがあり、1993年~1997年の間に進出している。その後2017年までに8店舗まで拡大したが、セーブオンのローソン転換に伴い全店舗が転換(但し金井町店→相川店)。2020年現在ではローソンが8店舗進出している。
1980年代から90年代にかけての架橋によって、本州と四国が繋がって以降、数多くの小売業が積極的に進出してきた。
コンビニもその例外ではなく、ローソン・ファミマが徐々に進出。ローソンについては1994年版での愛媛・徳島への進出が確認できる(参照)。
市場規模の小ささから出店を見合わせていたセブンイレブンも2012年に進出し、大手3社が揃った。
淡路島では、セブンイレブンの進出は2014年と遅かったが、ローソン・ファミマは2000年から店舗が散見される。
小豆島には1997年10月[5]、サンクスが進出。2013年5月、同地のエリアフランチャイジーであるサンクス東四国→アイル・パートナーズのセブンイレブン鞍替えに伴い、全店舗がセブンイレブンに転換。セブンイレブンしか存在しない稀有な離島となっている。2020年現在、小豆島内には6店舗のセブンイレブンが存在する。
また、直島(直島町)には「セブンイレブン なおしま店」が存在する。ここもサンクスとして2010年に進出後、小豆島同様セブンに転換され現在に至る。
しまなみ海道沿線の島を中心に解説する。本州との架橋は1999年、四国との架橋は2006年。
2000年のデータで進出している大手7社(サークルK・サンクス含む)は、サークルK大島シーサイド店(吉海町臥間、2000年開業。2001年に同町八幡にサークルK大島・吉海店として移転後、2018年にファミリーマートに転換)、ローソン因島市役所前店(因島市土生町、1997年以前開業)、ローソン因島土生店(因島市土生町平木区、2000年開業)、ポプラ瀬戸田店(瀬戸田町沢、1997年以前開業、但し1993年には酒店として掲載)が確認できる。
2020年現在、セブンイレブンは因島2店舗を、ローソンは向島2店舗、因島5店舗、生口島・大三島・伯方島・大島各1店舗を、ファミリーマートは向島1店舗、因島4店舗、生口島・大三島・大島各1店舗を、ポプラは生口島と生名島に各1店舗を展開。ファミリーマートの店舗のうち、向島の1店舗(尾道向東町店、2015年開業)を除く7店舗がサークルKからの転換店舗である(移転や看板以外を含めた改装が行われた店舗も存在。但し、どうやら電話番号は変わるらしく、連続性が見られなかった)。またポプラのうち、生名島(上島町生名、2019年8月1日開業[6])のみが2020年現在本土から架橋されていない離島である。
とびしま海道沿線、及び大崎上島にはコンビニ店舗が存在しない。
本土からの距離も遠くはなく、架橋は1973年と古いが、立地的にも大都市から離れた半島のような場所に位置する。それでも2000年の時点で、ポプラとセブンイレブンの進出が確認できる。2000年のデータでは、大島町にポプラ大島三蒲店(後のセブンイレブン山口大島三蒲店→周防大島三蒲店、ポプラとして1997年以前開業~2002年セブンに転換、2018年以降に閉店?)、橘町にセブンイレブン山口大島橘町店(1997年以前開業)が確認できる。
2020年現在、セブンイレブンが2店舗、ポプラ(周防大島店、2004年開業)が1店舗存在。
ここは長らくココストア、及びその傘下のエブリワンが多くの店舗を占め、特に離島ではそれが顕著であった。しかしココストアがファミリーマートに買収されると、多くの店舗がファミリーマートに転換。しかし、離島店舗はRICマートとして生き残る道を選ぶ。RICマートの親元のミツウロコグローサリーズはポプラと提携し、一部店舗がポプラに転換され、現在に至る。
2012年にRICマートが壱岐芦辺店を開業。その後、同店舗は2016年にファミリーマートに転換され、現在に至る。ココストアがファミリーマートに買収された後、2016年に壱岐郷ノ浦東店を開業。現在ファミリーマートは2店舗体制となっている。
ポプラは2013年2月22日に壱岐郷ノ浦店を開業後[7]、2015年6月19日には「生活彩家 長崎県壱岐病院店」を[8]、2016年には壱岐勝本店を開業させ、現在3店舗体制となっている。両社合計で5店舗。
1997年の電話帳でウイングニコマート対馬厳原店という店舗が確認できる。うち、ウイングという名称が2018年まで残ることから、この店のブランドであることが推測される。
ニコマートを同地で運営していた九州CVSがココストアに買収された2001年以降、同店はココストア対馬店となった。その後2016年にファミリーマートに転換、店名を対馬厳原大手橋店に改名して現在に至る。
ポプラは2015年に対馬桟原店を、2018年4月27日に対馬比田勝店を開業させ[9]、2店舗体制となって現在に至る。
RICは2007年の電話帳で、五島市内に富江店・木場店・中央店、新上五島町内に浦桑店が確認できる。いずれもファミリーマートに転換されることなくしばらくRICとして営業した後、何店舗かはポプラに転換されている模様。
浦桑店は1999年12月8日に当時の新魚目町浦桑郷で開業。2017年にポプラに転換され、ポプラ浦桑店として現在に至る。
うち、五島市の3店舗はいずれも2002年に開業。富江店・中央店は2017年にポプラに転換され、ポプラ富江店・中央店として現在に至る。木場店も2018年までは確認できるが、現在のGoogleマップのデータによると閉店している模様。2014年に開業した吉久木店もポプラに転換されているが、継承先はポプラ吉久木店ではなく五島病院前店のようである。
その他、2017年には吉久木店・岐宿店を五島市内にオープンさせ、ポプラは5店舗、新上五島町で1店舗の計6店舗体制となった。
その後、全国的なポプラの転換に伴い、五島列島でポプラを営業していたドゥイングが2020年にローソンポプラへの転換を表明、2店舗(既存店の中央店、及び新規開業の青方店)をローソン・残る6店舗をローソンポプラとして営業することとなった模様。[10]
五島列島に近接する小値賀島・宇久島には存在しない。
エブリワン→ファミリーマートのほかに、鹿児島地盤のコンビニ「アイショップ」も離島で展開している。
ファミリーマートが2店舗体制で存在。いずれもエブリワンとして2004年に開業。2016年にファミリーマートに転換され、現在に至る。但し電話番号は変更されている模様。
アイショップは南種子町に2店舗、中種子町に3店舗展開しているが、西之表市には1店舗も存在しない。ファミリーマートどころかスーパーすらも店舗を構える市街では敢えて戦わない、これも戦略だろうか。
人口1万3000人を有し、決して小さな島ではないのだが、アイショップを含めコンビニエンスストアが存在しない。これは自然遺産で環境が守られているというよりかは、険しい山に囲まれ平地が少なく、その上で市街地が宮之浦(旧上屋久町)、安房(旧屋久町)の2つに分かれ、さらにその中間に屋久島空港と屋久島町役場があり、まとまった町が存在しないという点も大きいだろう。それでも似たような地形であっても進出している地域はいくらでもあるから、やはり町で規制ないしはそれに近い状態になっている可能性は高いだろう。
2002年にエブリワン名瀬平田店が開業したのを皮切りに、2003年に大熊店・港町店、2004年に龍郷店、2005年に瀬戸内店、2011年に朝仁店が開業。エブリワン6店舗体制となった後、2016年までに6店舗ともファミリーマートに転換され現在に至る。
なお、ライバルのアイショップは4店舗のみだった。
エブリワンが2003年に徳之島町に亀津北店・亀津南店を、2004年には天城町に天城店を開業。そこから遅れること2014年に伊仙町にも伊仙店が開業し[11]、3町すべてに4店舗が揃った。2016年までに4店舗ともファミリーマートに転換され、現在に至る。
アイショップは進出していない。
沖縄については別記事を設けている。
とりわけ離島に関しては先行者利益が大きく働く。沖縄本島や10万人クラスの離島であればともかく、1~2万人台の島であれば1社でさえギリギリなところであるから、採算が取れず進出すらためらわれるだろう。2社以上が競合した離島は宮古島・石垣島(ホットスパー/ココストアとファミリーマート、2016年に両社統合後は1社体制)のみであり、特に宮古島は東京都の店舗密度を割り込むほどのコンビニ激戦区となった(宮内・大城 2018)。